紙を使わないアンケート調査入門

 一年以上ぶりの投稿となります。。
 この間、子供が生まれたり、仕事でも変化があったり(会社は変わってないですが)と更新が滞っておりました。
またちょくちょく記事を書いていきたいなぁ、と思います。

紙を使わないアンケート調査入門―卒業論文、高校生にも使える

紙を使わないアンケート調査入門―卒業論文、高校生にも使える

 先日、ご恵贈いただき、僭越ではありますが、読後の感想をかかせていただきました。


 本書はGoogleフォームを使ったWebアンケート調査作成および調査・分析技術をわかりやすい表現で伝えてくれています。


 Googleフォームを使った、という部分が確かに目新しいですが、本書の意義は「若い初学者にとって、わかりやすく実践的な知識・スキルを効果的に学んでもらえる工夫がされている」ことにあると思います。


 本書のまえがきでは大学生だけでなく、大学の先生、高校生、高校の先生へ向けたメッセージが送られております。
 2012年度からの新教育指導要領で「データの分析」が数学Ⅰに組み込まれています(本書を通じて恥ずかしながら思い出したのですが)。これを受け、編著者は高校で、また高校を卒業した大学生を受け入れる上で、この「データの分析」を活用したデータリテラシー向上を図るポイントを伝えています。
 私も実務上の経験から、学生時代から仕事に関わる数字、あるいは世の中に飛び交う数字を正しく理解するためのリテラシーを育くむことが重要であると痛感しています。このまえがきから、「データの分析」の実践を通じて、教科としての定着だけでなく、個人のリテラシーを高めてほしい、という思いを感じました。
 また、情報セキュリティ・プライバシー保護に随所に言及されている点も、社会人(特にデータを扱う職業)になる上で大きな意義があります。


 本書は、Googleフォームの使い方⇒調査設計・設問作成⇒集計⇒多変量解析で構成されています。


 Googleフォームの使い方はキャプチャをつけて丁寧に解説しているので、操作上迷う事が少なく実践ができると思います。
(あらためて、Web調査の基本的な部分をこれだけ容易に実行できるGoogleフォームのUIに脱帽ではあります。。。)


 調査設計・設問作成は、調査票の作成部分だけでなく調査全体の流れに沿って書かれており、初学者にもわかりやすい内容です。
 回答バイアス、設問構成(キャリーオーバー効果)などビジネスで調査を構成する上で重要な概念のおさらいにも使えると思います。(恥ずかしながら社会的望ましさの影響を極力排すための「間接質問法」を私は認識しておらず、勉強不足を痛感しました(汗))


 集計・多変量解析はRを利用して進められています。
 アンケートデータ分析についての類書と比較しても、平易に、実務上の要請が高いポイントを中心に構成をされていると思います。
 データ分析を習得していく上では、やはりRなど(手持ちにあるソフトウェアで)実際に手を動かしながら、データ構造の理解の進め方や分析プロセスを体感しておくことが必須です。
 その点で学生の教育の上ではもちろん重要ですし、データ分析をどんな形であれ生業としていくのであればこうした体感を早くから始めるのが望ましいでしょう。


 卒論で調査実施を控えた学生さんはもちろん、調査会社志望の人にもお薦めできます。
 調査会社のアンケート調査担当若手であれば、(調査設計・設問は理解しているでしょうから)集計・データ解析の部分をカバーしていくとよいと思われます。(統計的検定は別途)