実務でSEMを適用するときに

最近、続けて構造方程式モデリングSEM)をしていたので、実務上のよくある注意についてまとめておこうと思います。
テクニカルなノウハウというよりは瑣末なことですが。。。
また、諸先輩方にとっては当然なことでありますでしょうし、お叱りを受ける内容かもしれませんが、「いまんとこの解」として記しておこうと思います。


実務でSEMを用いるときに最も重要なのは、評価構造等を同定した「その先」が中心であるということです。
したがって、その本質を外さなことが重要だと感じています。


1.分析者は「状況把握」せよ
実務での分析は分析者単独で完結することは少なく、自身の専門分野以外のノウハウが解釈に必要なケースがほとんどです。
(このことは、学術研究でも共同研究では同じ事が発生するでしょう。)
実務では、同じ社内の部署、同じ社内の違う部署、クライアントとベンダーなどの関係となり、
それぞれに応じて、非分析者の分析手法そのものに対する理解度や分析者の当該テーマに対する理解度が異なります。
小規模な案件であれば分析者がその情報の偏りを把握した上で、各関係者の目的達成のための論点整理とワークスケジュールを管理していくのが求められます。
したがって、分析手法だけでなく、調整能力がモノを言ったりするように感じています。
これはSEMだけに固有ではありませんが、仮説検証プロセスが重要な手法ですので特に案件収束においては重要でしょう。


2.最終モデルをそのまま報告するな
すべてのケースに該当するわけではありませんが、AMOS等で描いたパス図をそのまま最終報告書にして終わり、ということは少ないでしょう。(多くの場合かなり複雑に見えるでしょう。)
社内であれ、顧客への提供であれ、その後上位者を含んだ次の検討がすすみます。
その際にパス図をポンと提示し、それをもとにクドクド説明するのは効果的ではありません。
キーファクターを整理した上で、再度情報を整理して提示するべきでしょう。
もちろん、最終的なパス図(モデル)は報告するでしょうが、それはメインではなく、知りたいのはその先にあることが多いです。


3.で、どうすんの?を考えろ
ほとんどの場合、SEMで現象を記述して、終わりではありません。
「その見解を踏まえてにどうアクションするべきか」の示唆が得られることが当然ながら求められます。
戦術策定に役に立たなければ、絵に描いた餅になるので、そこを踏まえたモデリングや変数選択が重要です。


4.SEM以外の方法を考えてみる
普及が進んでいるとはいえ、伝統的な統計モデルに比較して複雑なことは間違いありません。
分析の目的を達成するために、他の手法のほうが説明を行う際に優れてるならそっちを使うのが賢明であることも多いです。
この検討で、潜在変数、本当に入れる必要があるのか。逆に解釈しにくくなってないか。
多変数を扱え、かつ視覚的にモデリングできるのは魅力ですが、SEMに固有でなく、周囲に説明をする上でもっとわかりやすい方法も領域によってはあるでしょう。
少なくとも、「何故SEMなのか」は周囲への説明のためにロジカルに納得できる内容になっていることが望ましいです。


最後はSEMを使うな、ともとれるトーンにも思えますが、やはり多変数のデータを扱い、モデルとデータとの適合を評価しながら、モデリングできるプロセスは様々な用途で魅力です。
また、リサーチデータで言えば「3相のデータ」を扱いやすいのもやはり大きなメリットであります。
そうした魅力がある分、手段が目的になりがちですので、その落とし穴に入らないように気をつけていく必要がある、ということを改めて感じている次第です。