MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体


R25の立ち上げ、ライブドアニュース、BLOGOSの立ち上げなどに関わった、現在NHN Japanの田端氏です。
経歴を拝見してもわかりますが、様々な媒体の立ち上げ、運営に関わったプロがメディアを論じてくれます。


本書では、特定のメディアにフォーカスしたり、対比的に論じていくというより、紙媒体や自社Webサイト、ソーシャルメディアのそれぞれの特性とその位置関係をわかりやすく整理してくれています。
事例を通じて噛み砕いて説明してくれているので、門外漢の私でも理解しやすいし、何を理解していなかったかを特に気づかせてくれました。
その分かりやすい整理が特に表れていたのが、「フローとストック」「権威性と参加性」「リニアとノンリニア」という視点です。
この3軸を与えることで現状の媒体のポジショニングと補完的な関係性と今後の動きについて示唆を与えてくれています。


特に惹き付けられたのは本書後半。
「メディア野郎のブートキャンプ」の章は媒体運営上の、というよりビジネスの基本を教えてくれています。
この内容は、ある程度運営上成功している媒体では当たり前のコツ・視点なのでしょうし、媒体運営に限らず経営・運営の基本でもあることが多いです。
が、そのイロハを知らない、あるいはつい忘れてしまうことは少なからずある訳で、媒体運営という文脈で見つめ直すことには意義があるのだと思います。


「メディアとテクノロジー」「劇的に変わるメディアとメディアビジネス」の章では、媒体運営に関わっている人間だけでなく、何らかのコンテンツをもとにビジネスをしている人間には身が引き締まる記述が多いように思います。


技術が変わり、即時に構造が変化することはさほど多くはないと僕は感じます。
そのとき、その技術を「時代の徒花」と考えて従来環境に基づいた経験則で解釈することもあるでしょう。
あるいは、権威性(イケテル感という短絡的なものから、重鎮の見解まで)から「思考停止」になっている状況もよく見るケースであります。
本書でも述べられていますが、新しい変化をコンテンツの受け手の視点で自問自答をするということが、変化の見極めだけでなく、その中でどのように進路をとるべきかを探る基本的な姿勢なのだと思います。


僕自身はメディアを運営しているわけではありませんが、その周辺のデータを扱うことはしばしばあります。
こうした、メディア周りのデータを分析するときは、ついつい表面的な数値を見てしまいがちだなぁ、と思います。
もちろんそれで成立する領域もあるのですが、本書で述べられているような特性を「教科書的に理解しておくこと」は、全体像の中で自身の分析結果がもたらす機能を理解する上では重要なのだと思います。