JMRX勉強会「次世代マーケティングリサーチ討論会」に行ってきた

■第34回JMRX勉強会「次世代マーケティングリサーチ討論会」


というわけで、行ってきました。
コレに。


ベテラン著名リサーチャーであるレイポインター、萩原雅之の両氏が登壇するという、なんというか橋本対小川戦のような期待をしつつ参加です。
(いや、全然違うんですけど。)


で、メモが以下なんですが、レイさんのべしゃりが高速で、聞き漏らし、聞き違いが多々あると思いますので、それ込でご覧ください。


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○海外のマーケティングリサーチの現状と展望(レイ・ポインター氏@VCU)

・テーマ:4つの破壊
 -気候変化
 -応急処置
 -ニッチ(小さい市場)
 -革命

・気候変化
 -シニアエグゼクティブの55%はデータを使わない⇒情報が伝わっていない
 -トップエグゼクティブは瞬間的にわかる情報(絵)が望ましい
 -焦点は数字から会話に移っている(声をきかせてくれ!との上層部の声)
 -スピード感(時間がかかりすぎるデータは待てない、時間がかかると思ってしまう)

・応急処置
 -既存のメソドロジーに対する応急処置:調査をもたせるには
 -ゲーミフィケーション
 -モバイルへの対応:根本的な解決なわけではない対応。
 -行動経済学:質問から得られる情報量を変える

・ニッチ
 -ニューロサイエンス:コスト、時間がかかる。限定的な情報に限られる。魅力・敵対しかわからない(注:ちょっと簡略化しすぎ?)
 -表情認識:感情を表情から読む。認識率50%で発展途上。
 -ソーシャルメディア:全体のMRの10%ほどにしかならない。無視はできないが。

・革命
 -コミュニティパネル:カスタマーと将来を作る
 -SoLoMo:ソーシャル、ローカル、モバイル。4sqなどトラッキング情報との融合。
 -テキストマイニング:テキストの解釈。
 -ABテスト:群分け提示。(注:コントローラブルのプラットフォームとリアルタイムの大量データ解析に分解できるものと思われる)。バーチャルショッピング。

・統合的な未来
 -コミュニケーションすべきコミュニティ<Intensiveコミュニティ(100K-500K)でSurvey、FGI、コ・クリエーション/エスノグラフィー、MROCsを行う>+ビッグデータソーシャルメディアデータ


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○日本のマーケティングリサーチの現状と展望(萩原氏@トランスコスモスアナリティクス)

・調査手法構成比(JMRA)
 -訪問面接主体⇒【90年代】電話調査(電話帳⇒RDD)⇒【05年以降】Web調査と変遷
 -各フェーズで従来手法への批判があり、そして浸透。(イノベーションのジレンマbyクリステンセンを地でいく)
 -そのプロセスではクライアントサイドとの協業から各調査手法の価値を見出していった
 -Webが全盛を続けていくわけではないのでは・・・。
 -この構成比にだけ目を向けるべきではない。クライアントの調査範囲は拡大(ソーシャルリスニングなど)
 
・故小林和夫氏の予言(2002)
 -個人情報保護でデータ収集が困難に
 -MR以外のデータ収集・活用と競合する(クライアントサイドからは「競合」ではない)
 -ネット技術を駆使した新しいデータサプライヤーの登場
  ⇒データはクライアントサイド、事業サイドに蓄積。既存MR業界は縮小するのでは。
 -他業界によるMRデータへの付加価値提供
  -単なるデータサプライヤーとしてのMR業界に。
 
IBM:データ分析で気付きを導く(日経の広告)

・この状況をどう考えるか
 -危機でもあり、機会でもある
 -ビジネスドメインを絞れば危機

・レイさんのブログより:2010年の20年でサーベイはなくなる
 -去年の暮れ:18年でなくなる
 -質問紙形式がなくなる

P&Gリサーチトップ・ルイス氏:
 -2020年までにサーベイリサーチの重要性は劇的に低下する
 -代表性がすべてという思い込みを捨て去る必要がある
 -SMリスニングが置き換わるだけでなく、既存サーベイの実施が消費者行動意識の変容のため困難になる

・JMRX2010年7月の萩原氏の講演
 -リサーチパートナーとのしての消費者、消費者の行動・意図がログになる。
 -これを先端テクノロジーを実現する
 -ここ数年でこれらの考え方が実際に動きつつある
 -傾聴、個人レベルあるいはセンサス、リアルタイム、行動データの重要性が増してくる。


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○Q&A

・Q:クライアント内も決して一枚岩ではなく、保守的なことが多いが海外企業と違うのか。

 -レイさん:ラガード・アダプター曲線(キャズム?)があるように、日本の分布はアダプターが少ない分布。スタートが遅いということはアンフェアだと思う。日本国外では危機感があるプレーヤーがいる(P&Gなど)。また、技術動向、市場動向へのキャッチアップが早い。
 -萩原さん:捕捉として、日本はイノベーションの取組が早くない。一旦誰かが採用すると採用が早い。

・Q:イノベーター・アーリーアダプターは得なのか
 -レイさん:結果的には2番手が得になることもあるが、1stムーバーだからこそ動ける、追随を許さないメリットがある。賭けではある。
 -萩原さん:捕捉として。海外のカンファレンスの内容は日本に伝わらない。イノベーティブに価値を見出す土壌作る、共有をしていくことが必要条件なのでは。


○教えてレイポインター

萩原さんがインタビュアーで進める。

・レイさんについて
 -56歳。30年以上MR業界に。
 -91-94年萩原さん@日経Rのロンドン駐在時にレイさんと会う。CAPIを見せてもらう。
 -コンピューターサイエンスがバックグラウンド。キャリアの始めはプログラマー
 -コンジョイントアナリシスの研究、オンラインサーベイへの関与(アクセスパネル構築)が転機。
 -国際的なリサーチコミュニティの構築にも尽力。

・伝統的な調査の今後。20年後になくなるのか?
 -萩原さん:レイさんはブログでも「マトリックス形式、チェックボックス形式はなくなる」といっているが。。。
  -「絶対にXXXXが必要である」と言われると、「WHY?」と思う。それが契機。
  -世界は複雑になっている。そうした世界をプリコードでとらえられるのか?
  -サーベイへの協力が悪化している。
 -萩原さん:シングルクエスチョン、ディスカッションは残るとはいわれるが。
  -NPSのような形、1問決め打ちでオープンに聞くシングルクエスチョン。
  -一分半に3問のみという形もある。
  -行動経済学に基づく調査フォーマットの構築もある。
  -ジェフリーヘニングのブログ:マスターカードとビザの4つの属性を聴かれた⇒違いはない⇒違いを答えろ
 -萩原さん:多変量分析等は必要なくなる?
  -階層型クエスチョネア?モンテカルロシュミレーション?(ちょっと理解できない)
  -ビヘイビアとシングルクエスチョンを組み合わせる。ビヘイビアから検出した解について掘り下げるWHYとしての質問。
 -萩原さん:ディスカッションは?
  -過去はクローズド形式の質問だった。数式、解析で取り扱える。
  -しかし、解析技術も変わった。オープン形式でも分析として取り扱える。
  -オントロジカル:定量的な情報⇒定性的な判断。(これ、実はスゴイ重要な気がするよ。。。意味が理解できてないけど。)
 -萩原さん:GCSはこれからイケる?
  -GCSはまだ発展途上。(まだ機能しない?)
 -会場Q:もう有意差検定とか使えない人多いと思うけど、この領域の重要性は。
  -必要性は引き続き。
 -会場Q:ソーシャルリスニングデータからインサイトが出る場合、出ない場合がある。
  -ソーシャルリスニングの成功要因:人気度の捕捉。モニタリング。

・ESOMARコード:リサーチャーはリサーチで収集したデータをリサーチ以外で使ってはならない。リサーチは、リサーチ以外の活動、商業活動と明確に区別、分離しなければならない。
 -ちょっと聞き取り不能。。。

・会場Q:アドテク関連の技術の応用は?
 -製品化テストなどのときにプリントオンデマンドなどのバーチャルテスト(ABテスト的)を使うことなどがある
 -とはいえ、実際の販売でテストは法的に難しいところもある。


■所感

  • レイさんの声は聴きとりやすい(これは才能ではないかと思う)。そして情報量が多い。通訳が大変そうだった。。。
  • 萩原さんの質問もすごく上手い。色々と補間してもらえたと思う。
  • 「応急処置」の間に「革命」に着手するという考え方をもっと実践せねばと思う。どうしても応急処置レベルばかりをしてしまう。
  • ビッグデータについては随分と莫とした話をしていたと思う。リサーチとか「インサイト」みたいな用途に使うには現状の技術的ハードルと非常に乖離があると思う。海外の先行研究事例を見ても、桁外れに難易度が高いので、いかに協業のボーダーを作らずにレバレッジを図るかが勝負になると思う。
  • ビジョンクリティカルとしての立場もあるし、当然コミュニティパネルがベストアンサーと考えていらっしゃるのだと思う。一方で、レイさん自身がおっしゃるように単純にそれに追従するのではなく「WHY?」を問う姿勢が大事なのだと思う。アンサーは一つではなく、そしてプレイヤーによっても違う。
  • 私のような不勉強者は小林和夫さんをお名前だけしか伺ったことなかったが、その慧眼には驚いた。一度お話しを直接伺ってみたかった。。。