リサーチ会社と統計解析

僕自身はマーケティングの周辺でデータ解析をしているのですが、スペシャリストとして業務を進めていく上では、一定以上の専門教育を受けていることが望ましいと思っています。


バックグランドはマーケティングデータでなくて良いと思うのですが、初等統計は当然マスターしている必要がありますし、応用についても一定水準以上の知識がいると思います。


これは、通常のデータ解析業務にそのスキルが必要だから、ではありません。
持ち込まれてくる案件の多くは「キレイ」ではありません。
最適解をとても導けない内容で提案されていたり、様々な誤解が含まれた前提が含まれていたり、分析の過程を誰の目からみても明らかにするようにクリアにまとめる必要あったり。
こうした情報を整理・交渉していくことが重要なわけですが、一定水準以上の複雑な解析が含まれていたり・新たに含む必要があるとそれに対する対応がどうしても付け焼刃では難しくなります。
当然、こうした案件で「最後の壁」となるのがスペシャリストな訳ですから、多くの案件を対応するためのベースの知識が確立されていることが望ましいと思っています。


スペシャリストについてはそう思っているのですが、スペシャリストじゃない人についてはどうでしょうか?


よくリサーチ会社に入ると「統計って勉強してきてないんですけど、大丈夫ですか?」と聞かれます。
多くの人は「だいじょうぶだよー。自分も最初はわからなかったし。」と答えることが多く、また質問しているほうも、そう答えることを期待しているようにも思います。


僕の答えは「さっさと初等統計の本を一冊買って勉強を始めろ」です。


本を一回読んで、理解はおそらくできないでしょう。
何回も読む、実際に計算課題を解きながらやる。
そうした過程を入社後早い段階にこなしておいたほうがよいです(3年目くらいまで)。
できれば、テストしてあげるなど、会社も協力してあげることが望ましいです(なかなか、そこまでやっている会社はありませんが)。


なぜ早く取り組むべきか。
リサーチャーとしての「品質」の基礎条件であるけど、そこで競合差別性はあまり出ないからです。
満たしていないと、「劣位」に位置づけられるけど、満たしているから「優位」には今の時代位置づけられないと思っています。
(「インサイト」だのなんだの、がキーとなっていきている業界ですから。)


なので、自分の中で弱点になりうる(自信が持てない)要素になるのなら、さっさと克服しといたほうが賢明です。
会社の総合的な力としても同様のことが言えるでしょうね。



一方で、統計について教育を受けてきた人は実社会に入ると違和感を感じることがあります。
これは僕自身の経験でもあります。


自分の住んできた「クリーン」で「イデアの状態に近い」環境から、より複雑な要因が絡んだ環境に入ってきたため、実業務で行われている解析の「不備にみえる」箇所に目が行ってしまうのです。
そして、多くの場合、背後の複雑な要因が見えていないので、「あるべき姿」を追求していない怠惰が行われているように解釈をしてします。(場合によっては、「この会社はあまり分析力がないなぁ」などと勝手に思ってしまうことも。)


ただ、多くの場合、ロバストネスなど推計精度ではなく、業務の安定性の視点などで評価をすると「意外にこっちのほうがいい」ことが行われていることがあります。
そういった仕組みを作った人たちの経験則、あなどり難しと思ったことも何度もあります。


もちろん、実業務も改善するべきところも多く、事実、僕自身も改善の提案をその後いくつも実施する機会があります。
その際は常に複眼的に考えて、ロジカルに説得をしていく必要性があります。


したがって、教育を受けてきている人はその環境を「謙虚」に複眼的に思考し、分析し、行動することが、とても重要になります。


僕自身はインナーの解析をするときは、先人の話を聞きながら受け継がれてきた思考を理解したり、過去のドキュメントを読み漁るこで得た「先人の知恵の効用」と統計学的「あるべき姿」と実業務上の安定性をここ数年は複眼性の源泉としてきました。
クライアント業務だとここに「クライアントの目的への刷り合わせ」と「自社の目的への刷り合わせ」が入ってきます。
こうした多変数の読解と、目的の最適化を図っていくことが、アナリストには求められているのだと思います。


うーん、吐きそうなぐらいストレスフルですね(笑)