「KISSの原則」の妄信

行動計量学会の会報が届きました。


冒頭に名古屋大・星野先生が「KISSの原則批判と行動計量学の重要性」という題で寄稿していました。


KISSの原則とは「Keep it simple, stupid」の略で「本来の解析目的を満たすもっとも簡単な方法を利用せよ」という意味です。
オッカムの剃刀」という概念もデータ解析の世界では有名ですが、それに似た概念ですね。


星野先生は、以下のように警告しています。

「KISSの原則に従う解析では本来は誤りである」「場合によると全く真実と反対の結論すら導いてしまっている」研究は、人間行動に関わる研究であれば、実は非常に多いと思われます。


その後、単純さを求めるだけではなく、データの出所、抽出方法、集計方法、階層性などを考慮した上で、適切な計量的なアプローチを選択するべきという趣旨のことを展開しています。(私の理解の範囲では)


私の場合で言えば、大学を卒業して、リサーチ会社に入ったときに「いかに単純化するか」を否が応でも意識させられました。いわば、KISSの原則を第一原則として行動してきたわけです。「こうしたほうが計量的なアプローチではスマートなのに。。。」と思っても。


このアプローチが間違っているとも今でも思いません。やはりビジネスで顧客がいる状況においては「単純である」ことが優先されることが多いと思います。(もちろん、明らかに誤った結果に導くアプローチは論外ですが。)私たちビジネスの世界でデータ解析に携わるものは、「単純化で精度を犠牲にする」か「複雑であるが高精度である」という両極の間のジレンマに悩んでいると思います。そして、それはあるべき姿なのではないかな、とも思います。


しかし、私に限って言えば、ここ数年やや妄信的に「単純化」を選択しすぎたように思います。やはり、何事もバランスが重要。少し、計量的アプローチで本来とるべきスタンスを見つめなおさなければいけない時期に来ているのかな、と思います。


今日はここまで。