ドキュメント 戦争広告代理店

 

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)

 

 

数年前から折につけ話題になる本でずっと気にはなっていたのだが、ようやく読んだ。

 

1990年代におきたボスニア紛争における表側・裏側で行われた「情報戦」についてのドキュメント。

恥ずかしながら近現代史に弱く、ボスニア紛争については「悲惨な戦い」というなんとなくな理解しかしていなかった。

 

ボスニア・ヘルチェコビナ共和国がアメリカのPR会社を雇い、先んじて情報戦を仕掛ける。

じわじわと、国際社会を「ボスニア支持」の論調に変えていき、セルビアを追い詰めていく。

 

本書では「情報の拡大再生産」「スポークスマンの印象形成」「強い『ワード』の生成・発信」「情報網を張り巡らし、キーパーソンの言動をとらえ、機を見ていかに仕掛けるか」などなど現在においても姿かたちを変えて行われていることの本質が描かれている。

 

情報戦で繰り広げられる事象と実態が乖離していようが、戦術の巧拙で世論は動き、国家や人々の命運をも変えていく。

 

あらゆる「情報戦」を考える上で本質を考えるヒントになるし、その諸刃の剣ともいえる力をこれでもかと感じさせてくれる本であった。