マーケティング・リサーチ入門(有斐閣アルマSpecialized)

 

マーケティング・リサーチ入門 (有斐閣アルマSpecialized)

マーケティング・リサーチ入門 (有斐閣アルマSpecialized)

 

 

本書はマーケティングリサーチの入門書の位置づけである。

が、まず冒頭より「集めるデータ」「集まるデータ」という視点で展開をはじめる点で類書とは一線を画している。

 

アスキング以外のデータとして、ソーシャルメディアのデータ以外も当たり前のように記載されるし、集計データ・非集計データでできることなどリサーチャーがつまづきがちなポイントもさらりと解説される。

 

 

マーケティングリサーチ入門書の冒頭として、こうした視点を突きつけていることは刺激的である。

 

 

だが、よく考えれば、マーケティングリサーチを取り巻くデータ環境が既に大きな変貌を遂げている(遂げてしまった)ことを淡々と伝えているにすぎないのかもしれない。

当然ながら、クライアントサイド(たとえ調査関連部署だとしても)は、調査データのみに基づいた意思決定をしているわけではない。どのデータが存在し、どう活用されうるかのナレッジのUpdateなしに、仕事ができるわけがない・・・と突きつけているように感じたのは私だけではないはず。

 

 

入門書だから、研究者が書いているから・・・と回避せずに本書を一読することを私の周囲には薦めたいと思う。

(初学者が読むことも潮流を感じた上で学習を進める上で大事だし、経験者ほどよいUpdateができると思う。)

 

一方で、標本抽出、アスキング技法、統計的データ解析などももちろん盛り込まれている。網羅されているトピックの範囲は目を見張るものがある。本書一冊で十分な解説がされているわけではないが、今日押さえておくべきトピックがほぼほぼ網羅されている。定性調査についても少しではあるが触れられている(必要最低限という印象だが、概観としては十分だろう)。

 

また、集めるデータの強みも明確に記載されている。「ビッグデータ時代にリサーチは淘汰されるのでは」というざっくり話はもう聞き飽きるぐらい聞いているのだが、まずはこの整理の「強み」は理解した上で、他のデータとの違い、連携を踏まえて、思考していくことが生産的であると個人的には思う。